2008年8月23日(派遣社員の労働災害が増加)
8月21日の新聞に派遣労働者の災害が大幅に増加しているという記事が
掲載されていました。
データ上、2004年に比べて2007年は8.8倍に増えています。し
かし、2004年3月の製造業への派遣が解禁になってから派遣社員は大幅
に増えていますから、派遣社員の災害が増えるのは当然なのですが、それに
しても多すぎます。
製造業の派遣が解禁になった頃には労災隠しが横行していたと考えられる
ので、実質はこのような大幅な増加ではないかもしれないが、この状況は至
急改善を要します。
なぜ、このように増えたのでしょうか。
派遣社員は、短期的な即戦力が求められるため、すぐ現場に配置されるこ
とが多いのです。正規従業員のように新入社員教育を何日もかける余裕がな
いのです。安全に対する十分な教育・指導ができていないのが問題と考えら
れます。
それと、私が知っている派遣社員に聞くと、社員には「責任」を求められ
るが、それが嫌だから派遣社員を選んでいるということでした。「責任」を
負うのは嫌だ。自由に働いて、稼いで、自分の時間を楽しみたいということ
です。だから仕事に対する姿勢が正規社員とは異なるのです。
だから、社内ルールを無視することが多いのです。何かミスをしたらそれ
を正そうとして、回転する機械に手を入れたり、職場内を走ったりするので
しょう。派遣社員を雇い入れている企業では派遣社員の不安全行動・ヒュー
マンエラーに頭を悩ませている方が多いのではないでしょうか。
ヒューマンエラーには、4つに分類されます。
〈安全に作業する方法を知らない〉
〈安全に作業するための技術がない〉
〈安全に作業するためのルールを守らない〉
〈操作ミスなどの単純な人間のエラー〉があります。
ヒューマンエラーを防ぐには教育・指導・躾が必要です。しかし、単純な
ミスを無くすことは教育などでは簡単になくせません。なくせないから「仕
方ない」と諦めてはなりません。人間がミスをしても災害に結びつかない工
夫が必要なのです。「フールプルーフ」という言葉を聞いたことがあると思
います。ミスをしても安全を確保することが必要なのです。フールプルーフ
の例として、自動車のシフトレバーがあります。シフトレバーはブレーキを
踏んでいないと、Pの位置から動かせないのです。もし、その仕組みがなけ
ればどうなるでしょう。レバーを動かした時に急発進して、とても危険です。
しかし、この仕組みのお陰で、ブレーキを踏んでいるのでレバーを動かして
も急発進しないのです。
このような安全を確保する工夫ができていますか?
人は、決められた操作をその通りに行うロボットではありません。間違っ
た操作をしても災害にならないように機械の安全化を進める必要があります。
派遣労働者の災害状況はこちらをクリックしてください。
ご安全に!
2008年8月16日 (北海道の回転遊具事故)
8月8日からオリンピックが始まり、世界中はオリンピック一色になって
ようです。4年に1度の大会に向けて、体と技術を磨き、世界一に賭ける強
い精神力に拍手を送りたいと思います。
さて、8月12日、北海道グリーンランドという遊園地で事故がありまし
た。昨年、エキスポランドの事故以来、遊具の安全性について関心が高まっ
ています。今回の事故は「マンハッタンドリーム」というもので、18人乗
りのアームが回転し、最高到達点は14mにもなります。
操縦および監視をしている従業員が異常音に気が付き、非常停止ボタンを
押して、遊具を停止させました。そして、従業員が乗客を梯子で地上に降ろ
している時に、遊具が回転し始めました。回転を始めたために梯子が外れ、
乗客の一人が落ち、重傷となりました。
さて、どこに問題があったのでしょうか?
手順に問題があったのではないでしょうか。
非常停止ボタンを押すと、回転力を供給するモーターが停止をします。そ
の時点で救出に行くと、モーターによる回転エネルギーは遮断されるため、
回転力を失いますが、回転エネルギーにはモーターだけでなく、重力があり
ます。遊具のアームの反対側には重りがありますので、重い方が下に回転す
る残存エネルギーが残っていたのです。そのため、重り側が下がって、客席
の方が上に回転したのです。したがって、非常停止ボタンを押した後はブレ
ーキ操作が必要だったはずです。遊具の動きを固定した後に救出しなければ
ならなかったのです。
梯子の固定方法にも問題があります。
異常が発生した機械に梯子を掛けるとは、安全の保障がない場所に梯子を
掛けたということです。
異常時の手順の間違いと、救出方法の間違いが災害の原因だっとというこ
とになります。
それにしても救出が梯子では不十分です。なぜなら、救出されるまで、乗
客はしがみついています。握力の限界に達しているかもしれません。高所恐
怖症の人は手・足が震えてしまいます。救出は被救助者の体力に依存するも
のでは危険が伴います。せめて地面にクッションを配備し、飛び降りでも避
難ができる状態が必要だと感じます。
ご安全に!
2008年8月9日 下水道工事での事故
8月5日に東京都豊島区の下水道工事をしていた作業者が豪雨による増水
によって5人が流されました。
この工事は老朽化した下水道管の内側に塩化ビニール樹脂を貼る作業です。
こんな工事を下水道を止めずに行えるのだから凄いと関心しました。技術力
が優れているのがアダになったのかもしれません。下水道を閉鎖していたら
事故は無かったと思われます。
この事故は天災なのでしょうか、人災なのでしょうか?
人災としたら、何か労働安全衛生法に違反しているでしょうか。報道を見
る限りでは違反した事実はありません。避難のための縄梯子もありましたし、
危険を感じて避難の指示もしていました。
会社は「短時間にこれだけの雨量は予測できなかった」と過失がないこと
を強調していました。しかし、下水道のプロとしては、天候の変化・下水道
の水位変化の予測が甘く、避難指示が遅かったことは否定できません。
一番大きな原因は「ゲリラ豪雨」という激しい雨だったことは確かです。
しかし、自然災害なのだから仕方がないと考えていいのでしょうか。
ゲリラ豪雨と言っても、晴天の状態から一転して雨が降ることはありませ
ん。真っ黒な雲が広がってから降り出すのです。だから予測できます。
その予測を鈍らせているのは、数多くの成功した工事があるためです。過
去に下水工事をしている時に雨が降ることもあったでしょう。下水の水量が
増えてきて、そろそろ避難しないと危険だと考えて、避難するでしょう。雨
が降っても、ほとんど無事に作業をしてきたのです。そうのような成功の経
験が判断を鈍らせたのではないでしょうか。
仕事には期限がありますから、雨が降ってもギリギリまで作業したいと考
えるのは当然でしょう。しかし、安全に避難できる「ギリギリ」のポイント
(避難指示発令)は、どのように考えて決めますか?
雨量だけではありません。避難に係る時間が重要です。
マンホールの直径はたった60cmです。簡単に登れません。まして、タ
ラップではなく、縄梯子です。
下水道の高さは140cmしかありません。身体を低くしなければならな
いので普通には歩けません。
重いスエットスーツを着て、水が流れているところを歩くのから容易には
歩けません。
今回6人が作業していました。今回の状況でその6人が安全に避難するた
めには15分ぐらい必要ではないかと想定します。と、いうことは15分前
には避難開始の決定をしなければなりません。
判断は、作業場所の雨の状態だけではありません。上流の雨量も関係しま
す。作業場所からマンホールまでの距離も関係します。
今回の現場監督者は避難までに要する時間が頭の中にありましたでしょう
か?
さぁ、対策が少し見えてきたのではないでしょうか。
今はどこにいても、パソコンで気象情報が入手できるようになりました。
風や積乱雲、雨雲など意思決定の情報は眼でわかります。
避難に要する時間を計算していれば、避難の意思決定は難しいものではあり
ません。
工事の始めに、避難訓練をしましょう。
怖いのは自然災害ではありません。今回も大丈夫だろうという油断です。
ご安全に!
− − − − − − − − − − −
(参考)今回の下水道を遮断せずに下水管を修繕する工法はSPR工法と
いいます。詳しくはこちらのホームページをごらんください。
http://www.adachi-tokyo.co.jp/product/product_1.html
2008.8.2(石窯パンの店で一酸化炭素中毒)
大阪市東住吉区のパン屋で一酸化炭素中毒で12人が被害にあいました。
このパン屋の売りものは高さ2メートルもの大きな石窯です。経営者はヨー
ロッパで修行を積み、「ベーカリーのカリスマ」と呼ばれるほどで、お店も
大盛況です。そんなパン屋を襲った突然の出来事でした。幸い12人とも命
には別条ないということですが、大惨事の一歩手前でした。
一酸化炭素は本当に恐ろしいガスです。2001年には新宿歌舞伎町火災
で44人が命を失いました。この例は火災ですが、ガス湯沸かし器による一
酸化炭素中毒など、生命を奪うようなガスです、今年の春に大きな問題とな
った硫化水素も恐ろしいガスですが、硫化水素は卵の腐ったような臭いがす
るので低濃度でも危険を感じることができます。しかし、一酸化炭素は臭い
がないのです。色もありません。
一酸化炭素が体に入ったら体の中で何が起こるか勉強しましょう。
人間が肺で呼吸すると、肺の中でガス交換が行われます。血液中の二酸化
炭素を排出し、酸素を取り込む働きがあります。その酸素を心臓に送り、脳・
筋肉に送る働きをするのが血液中のヘモグロビンというものです。このヘモ
グロビンと一酸化炭素はとても結合しやすいのです。たとえ、酸素濃度が十
分あったとしても、ヘモグロビンは酸素と結合せず、一酸化炭素と結合しま
すので、脳へ酸素が供給できなくなります。脳へ酸素が送られないのですか
ら、体の自由が利かなくなります。身体が動かないことで異常を感じるよう
なものですから逃げることもできないのです。自覚した時にはすでに中毒状
態です。だからとても怖いガスなのです。
なぜ、このような一酸化炭素中毒が発生したのでしょうか。
換気扇が回っていなかったため、排気が不十分だということは解っていま
す。換気扇のスイッチを入れ忘れたのか、それとも誤って切ってしまったの
かもしれません。しかし、過去にも2度、換気扇が回っていなかったことも
あるし、事故当日はオーナーが始業時に確認したということだから、電気系
統のトラブルの可能性もあります。
この店では巨大な石窯を有していますので、換気が絶対条件になります。
スイッチを入れ忘れた。とか、電源回路が切れる。換気扇が壊れる、間違っ
て切断したなどが考えられます。
常に換気扇の稼働状況を把握する方法として、
・運転状況表示ランプを付ける
・排気口に紙テープを垂らし、眼で見て分かるようにする
・一酸化炭素濃度警報器を設置する
・複数の換気扇を稼働する
(複数の換気扇を付ける時は、電気回路を分ける必要があります。複数付
けても、電気回路の事故なら、全部の換気扇が一斉に停止します)
また、換気のためには空気取り入れ口が必要です。密閉していたら、換気扇
は回っていても、排気できないことも考えられます。
今回、男性従業員の指示で避難がスムーズにできたようです。
もし、あなたの近くの人が倒れたら、どうしますか? 当然、状況を確認
して、介抱するでしょう。場合によっては心配蘇生法が必要になりかもしれ
ません。しかし、その人が一酸化炭素中毒で倒れた場合は、一刻も早く逃げ
ないと、あなた自身が危険です。
危険を予知して、リスク評価して、対策を実施すると同時に、教育し、緊
急時の手順を決めておくことも重要です。さらに緊急時訓練が必要です。
ご安全に!
2008.7.26(脳血流からうつ病を診断)
独立行政法人労働者健康福祉機構が脳血流(SPECT)からうつ病と疲労蓄
積度を客観的に評価する方法を発表しました。
うつ病の発見にはセルフチェックによるものや職場の人・家族からの情報
に基づいて、主治医・産業医が診断していました。うつ病の初期はなかなか
分かりにくいもので、職場から連絡を受ける頃には就業が困難なケースも多
く発生しています。
初期の段階では、家族に心配させないように。そして、会社の中では、責
務を全うするために頑張ります。友人がいても、なかなか言い出しにくいも
のだと思います。友人がささいな言動を見て、気になり、「大丈夫か?」と
声を掛けることもあるでしょう。しかし、心配させないように気をつかい、
「大丈夫」と答えることも多いのではないでしょうか。
また、過労死などにつながる疲労蓄積についても発見が遅れることが多い
と思います。長時間働いても、何の変化もないような心身の健康な人もいれ
ば、労働時間は少なくても仕事・通勤と家庭での疲労が蓄積している人もい
るでしょう。
セルフチェックにしても、ありのままを、チェックしているとは限りませ
ん。うつ病・疲労蓄積のチェックは主観的な『ものさし』しかないのです。
しかし、今回発表された脳血流から客観的に評価することが可能になりま
す。これによって、うつ・疲労蓄積の早期発見、早期対応が可能になり、う
つ病等の休職期間も短くなるでしょうし、脳・心臓疾患防止にも効果を発揮
できると思います。この診断方法の普及を期待しています。
詳細はこちらを確認してください。
http://www.rofuku.go.jp/oshirase/topics_h20kenkyu_seika.html
仕事がら産業医と話す機会があります。どの先生も過重労働問題とメンタ
ルには苦慮しているようです。過重労働の産業医面談が法定化されています。
それを受けて面談指導をされていますが、先生方がおっしゃるには、「過重
労働対策イコール医師面談と思っている会社が多い。面談結果を報告する際
に労働時間削減をアドバイスしているが、一向に労働時間が減らない」とい
う話が多いです。
確かに過重労働対策の一つが医師面談ですが、最大でも45時間以下にする
ことが一番重要です。
また、秋葉原の連続殺傷事件や硫化水素自殺など痛々しい事件にも心の病
が関係しているでしょう。
今回、画期的な方法が発表されましたが、早期発見よりもストレス耐性を
もつ事、自分で心をコントロールすることが重要ですね。私は新しい趣味を
持ちました。カメラです。いつか皆様に作品をお見せできるように頑張りま
す。
ご安全に!
2008年7月19日(クールビズと作業効率の関係)
日本建築学会が事務所の28度設定に問題があると発表しました。18日
の発表を見ると、地球温暖化対策として軽装で仕事をするクールビズが多く
の企業で取り組まれていますが、軽装だけでは暑さのために仕事の能率が落
ちると指摘しています。報告によると25度から1度上がるごとに作業効率
が2%低下するということです。
まして、冷房の状態に問題があるところも多いと思います。エアコンの風
が直接当たるところは良く冷えて、風が届かないところは暑くなります。み
なさんのところはどうでしょうか、エアコンの風が直接当たらないように風
よけを付けているところも多いのではないでしょうか。そのような工夫をし
てもなかなか均一に冷やすことが難しいですね。28度に設定しても、場所
によっては30度を超えるところもあるでしょう。
作業効率が低下するということは、同様にミスも増えてくると考えていい
と思います。ミスが多くなるとヒヤリハット・労災にもつながります。労働
災害も夏場に多く発生しています。暑さによるミスから災害につながるので
しょう。
日本建築学会は、換気や送風を組み合わせ、作業効率を下げない省エネ方
法が必要だと提言しています。具体的には、エアコンと同時にサーキュレー
ターで室温の均一化を図り、扇風機で個別送風すれば体感温度が下がって能
率は向上するとしています。
事務所の空調で理想的だと思うのは清水建設などが提案している「全面床
吹き出し空調システム フロアフロー」です。
(参照 http://www.shimz.co.jp/tw/tech_sheet/rn0138/rn0138.html )
床面全体から空調空気を吹き出すため、空調ムラが発生しにくいと同時に空
気の流れが一様になり、夏は冷たい空気が足元から発生し、パソコンなどか
ら発生する熱気を天井へ押し上げます。冬は暖かい風で足元が暖かです。
事務所はエアコンがありますが、現場ではなかなか空調するのは難しいで
すね。扇風機を置いたり、スポットクーラーで対応していますが、快適な環
境はなかなか作れません。「クールネック」(水を含ませたものを首の回り
に巻いて、気加熱を利用するもの)を首に巻いたり、保冷剤を作業服の中に
入れたり、ファン付きのヘルメットもあります。
「つくし工房」の熱中症対策用品などはいかがでしょうか?
http://www.tukusi.co.jp/
人間が快適に仕事ができて、作業効率が良くなり、ミスを防ぐ環境を作り
ましょう。『良い仕事は、良い環境から』ということですね。
ご安全に!
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関係記事(7月18日読売新聞より抜粋)
地球温暖化対策として、夏場を軽装で過ごす「クールビズ」が、冷房温
度を28度と高めに設定し、省エネを図る取り組みで、年々広がっている
が、日本建築学会のチームによる最近の研究で、軽装だけでは暑さで仕事
の能 率が落ち、経済損失にもつながる場合もあることがわかってきた。
専門家は「換気や送風を組み合わせ、作業能率を下げない省エネ方法が
必要だ」と提言している。
クールビズは、6〜9月に「ノーネクタイ、ノー上着」で職場の消費電
力を減らす運動。環境省が2005年に提唱した。28度は建築物衛生法
の定める執務室の上限温度だが、作業の能率への影響は不明で、日本建築
学会は06年から科学的検証を進めてきた。
神奈川県の電話交換手100人を対象に1年間かけた調査では、室温が
25度から1度上がるごとに作業効率が2%ずつ低下した
2008年7月12日 (シュレッダー火災)
今週注目したニュースは、シュレッダーにスプレーをかけたことによる出
火事故です。2年間に5件以上発生しています。
紙づまりなどを直すために、スプレー式の潤滑オイル等をかけて、スイッ
チを入れると出火するものです。原因はスプレー缶に入っている液化石油ガ
スです(LPG)。これらのガスは空気より重たいため、空気中に拡散せず、
下に溜まります。シュレッダーは細かく裁断された紙を入れる箱があります。
その箱にガスが溜まります。少量でも爆発下限界を超える可能性があります。
その状態で、スイッチを入れると爆発するように燃えるのです。
シュレッダーの潤滑オイルは液体タイプを使用してください。紙に潤滑オ
イルを含ませて、シュレッダーに入れるとシュレッダーに刃に潤滑オイルが
付着し、ある程度静かになり、長く使用できます。
オフィスにおいてはこのような液化石油ガスを利用したスプレーが多く使
われています。狭いところの埃を吹き飛ばすスプレーや、スプレーのりや、
オフィスクリーナー、潤滑油、殺虫スプレーなどがあります。これらはオフ
ィスに限らず、何気なく使われているでしょう。
気が付きにくいところに危険は存在しているのです。私もこのような火災
が起こるなんて考えていませんでした。多くの事故を知らなければ、危険予
知もリスクアセスメントも正しく行えません。
オフィスで、液化石油ガス(LPG)の危険性を指導している職場は少な
いのではないでしょうか。ゴキブリなどの害虫が出て、殺虫スプレーをたく
さんかけたところにコンセントがあると引火することもあります。昨年、爆
発的に売れたLION社のバルサン氷殺ジェットの販売自粛されたことがあ
りました。
(解説:バルサン氷殺ジェットはマイナス40度の極低温で瞬間的に害虫を
凍らせるもので、殺虫成分を含まないということから台所でも、幼児が居る
所でも使用できるということが好評で、320万本の大ヒットになりました。
しかし、殺虫成分を含まないことから、コンロに火をかけたまま使用して火
災が発生する事故が多く発生し、LION社は、昨年8月25日に販売中止
を決定しました)
「火気注意」と書かれたスプレーがどのくらい使われているか調べて、必
要に応じて教育指導をお願いします。
ご安全に
2008年7月5日(新宿歌舞伎町ビル火災)
7月2日に、2001年9月1日に発生した、新宿歌舞伎町ビル火災の判
決がありました。7年たった今も火災の発生原因は放火の疑いのままです。
火災を発生させた容疑者が不明のまま、ビルの管理者にどうのような判決が
でるのか注目していました。
判決は起訴された6人のうち、5人が有罪(禁固2年〜3年)、執行猶予
(4年〜5年)。マージャンゲーム店の関係者である1人は無罪となりまし
た。
この様な火災事故は、一昔前ならば、放火犯人が全面的に悪く、犯人が特
定できない現状では有罪判決にはならなかったかもしれません。しかし、消
防法に違反している事実があり、防火・防災意識が欠如していました。この
火災では数名が無事脱出しましたが、いづれも従業員でした。従業員であり
ながら避難誘導をせずに脱出したということが防火・防災意識が希薄だった
ことを裏付けるように思えます。
原因は放火ですが、昨今の火災の発生原因のトップは放火であり、放火は
いつどこで発生しても大惨事にならないように防火管理をしなければならな
いことが今回の判決で明らかになったような気がします。
火災が発生したのは放火ですが、防火扉が閉まらない状態であったこと、
階段に多量の物品が放置されていたり、煙感知器の未設置があったり、非常
用進入口が封鎖されていたなどの防火管理上の不備がなければ、放火されな
かったかもしれないし、放火されても、死者を出すようなことにはならなか
ったということです。
みなさんの会社では防火扉の回りに物品を放置していませんか?
私の経験上、防火扉を開放して固定しているのところをよく見かけます。
防火扉は耐火性能上、窓を付けられない(現在では窓付きの防火扉も認めら
れています)ため、ドアの反対側が見えず、危険だからとか、重たくて開き
にくいからとか、出入りが頻繁だから、などの理由により開放したまま固定
しているものを見かけます。これらは、新宿歌舞伎町ビル火災のように大災
害になるおそれがあります。
みなさんの身の回りにこんなことがあればできるだけ早く改善しましょう。
改善の方法としては、煙感知器連動型の防火扉にするのがいいと考えます。
通常は開放しておくけど、感知器が反応する、もしくは、火災報知機を押し
た場合には自動的に閉鎖するのです。これであれば、たとえその場所が無人
でも、扉が閉鎖します。
煙感知器連動型にするのは改造費が高いと考えますか? 2001年の新
宿歌舞伎町ビル火災の民事訴訟での和解金は8億6千万円と報道されていま
す。よく考えてみましょう。
ご安全に!
2008年6月28日(道路交通法改正からもうすぐ1か月)
最近、小さな子供を乗せる二人乗りの自転車でヘルメット着用しているの
を見かけることが多い。6月から道路交通法が改正の効果と思います。最近
の子供用ヘルメットはおしゃれなものが増えてきたことも着用率が高くなっ
た要因だと思います。子供が自転車に乗った時の頭の高さは地上から1メー
トル30センチぐらいになるでしょう。自転車が転倒し、子供が地面に落ち
たすると、頭がい骨に相当のダメージを与える可能性があるから是非着用し
て欲しいと思います。
最近の自転車を見ると、子供の安全のためにいろいろな工夫が見られます。
前に子供を乗せる自転車が良いと思います。後ろに乗せていると、子供の状
態が分からないので運転に集中しにくくなります。さらに前乗せタイプでは、
前輪を小さくして、子供の高さを低くしています。子供の位置が低いと、重
心が下がり安定しますし、前方も見やすくなります。また、万一転倒しても、
ダメージが少ないでしょう。電動アシスト自転車も安くなってきました。電
動アシスト自転車は脚力を補助するので、こぎ始めの不安定な時に安定感を
高めることができます。
近所では、前と後に子供を乗せる3人乗りも見られます。今の法律では違
反となるのですが、仕事と育児を両立させる方が多く、黙認している状態で
す。現在、3人乗りを認めるかどうかの検討をしていると聞いています。3
人乗りの安全な自転車とはどんな機能が必要なのでしょうか。3人乗りで一
番危険を感じる時は、一人を乗せて、もう一人を乗せる時です。一人を抱え
ている時に転倒しかけても、支えることができません。乗り降りの安定性が
求められます。そう考えると、3輪自転車が一番適していると思います。以
前も3輪自転車が流行った時がありました。しかし、その時の3輪自転車は、
籠が後にあるタイプが多く、後の籠から荷物を抜かれる犯罪が多発し、減っ
たような気がします。3人乗り自転車には前が2輪の3輪自転車が良いでし
ょう。前の2輪の間の低いところに子供を乗せるのが安全だと考えます。
さて、話は変わりますが、先日、タクシーに乗りました。後の席で、シー
トベルトをしようとすると、ベルトがロックしないのです。運転手に言うと、
「お客さん、ここは高速ではないからベルトしなくていいですよ。高速道路
はしないと捕まるけど、一般道は違反ではないです」と言われました。この
運転手は罰金や減点のことしか考えていないようです。私は目的地に着くま
で「なぜ後部席のシートベルトが義務化されたか」を教えてあげました。も
ちろん、私は、正常に使える場所に移動して、シートベルトをしました。シ
ートベルトをしながら、「こんな運転手には安心して命を預けられない。自
分の身を自分で守らなきゃ」と思いました。
最後に。来週は安全週間です。スローガンは「トップが率先 みんなが実
行 つみ取ろう職場の危険」です。この期間中に一つでも二つでも危険を排
除して安全で快適な職場を作りましょう。
ご安全に!
2008.6.21(天窓から小学生が転落)
19日に小学生が学校の天窓から落ちて死亡する事故が発生しました。子
供の事故死は、労働災害による事故死とは違う悲しさがあります。
なぜ、この事故は発生したのでしょうか。昭和61年に建設されたこの学
校は、屋上には生徒は上がらない。だから特別の措置(転落防止措置)は不
要として施工されました。
ここで気になるのは、どうして、施工主(杉並区)は「転落防止措置は不
要」と考えたのだろうか、当時の担当者は屋上は教育の場ではないと考えた
のでしょう。学校の建物の使い方は、学校長や教職員の判断に委ねられます。
担当者と当時の学校長との間で、屋上は使用しないと決めたとしても、学校
長は変わるし、教職員も変わります。取り決めが永久に引き継がれることは
困難です。したがって転落防止措置をしなかったことが原因の一つになりま
す。
次に考えなければならないことは、子供の行動です。子供は高い場所があ
れば「上りたがる」、狭い場所があれば「入りたがる」、歩行が困難な場所
があれば「歩きたがる」、障害物があるとそれに挑もうとする“チャレンジ”
精神が旺盛なのです。それが普段使わない場所なら、天窓を見て、上がりた
がるのは当然の行為だと考えます。
現場の写真を見ると、チラー(空調機の室外機)や配管があり、小学生が
授業その他で使用するには問題が多くあります。
この事故のあと、あちこちで小学生の転落事故が過去に多く発生したこと
が報道されています。その状況を見て、六本木の回転ドア事故を思い出しま
した。あの時も死亡事故の前に、「腕を挟まれた。足を挟まれた」という災
害があったにも関わらず。過去の事故情報が生かされていなかったのです。
人間は失敗から学び、成功していくものです。失敗(事故)情報は共有して
いかなければ安全は確保できません。今は、死亡事故が発生してから初めて
アクションを起こしている例が多いのではないでしょうか?
皆さんは「事故災害防止安全対策会議報告書」(平成11年12月8日)をご
存じでしょうか?(下記URL参照)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/jikosaigai/991208houkoku.html
JCOの臨界事故を始め、災害が大きな注目を浴びたときに、「安全を第一に
考えるという安全文化」が必要だと発表したものです。安全文化を構築する
には、安全教育を学校で始める必要がある等述べられています。安全文化を
教えるべき、教育の場でこのような災害が多く発生していることは非常に残
念です。
私の事務所では産業の現場に限らず、学校施設、福祉施設の安全診断も行
っています。お気軽にお問い合わせください。
ご安全に!
2008.6.14(点滴でのヒューマンエラー)
6月10日の夜に速報で入ってきたニュースは「三重県伊賀市の整形外科
「谷本整形」で点滴などの治療を受けた患者14人が体調を崩し、うち女性
1人が死亡した」というものでした。点滴で? そんなに多くの人数が?
疑問ばかりで何が起こったのか理解できませんでした。しかし、日々、実態
がはっきり見えてきました。院内感染で「グラム陰性桿菌類」が混入し、作
り置きをしたため、容器内で細菌が増殖し、敗血症などをおこしました。点
滴の薬剤は先生の診断後、調剤の指示が出てから作るのが常識と言われるに
も関わらず、土曜日に作ったものを週明けの月曜日に使用したということも、
さらに、この作り置きが常態化したのは8年も前からということも分かって
きました。
この病院は大変評判で、遠方からも大勢押し寄せ、朝9時の診察開始にも
かかわらず、朝7時には多くの人が並んでいたほどです。1日に300人以
上だったと言われています。6時間の診察なら1時間に50人にも達します。
先生も大変だが、看護師も大変です。9時の診察開始前に準備しておかなき
ゃ間に合わない。患者さんは受付で待って、診察で待って、点滴で待って、
会計で待たなきゃならない。だから、できるだけ早く処理してあげたい。患
者は体の痛みを訴えているお年寄りが多い状況です。早く処理してあげたい
という親切心は良く分かります。親切心より自分たちの効率を第一に考えた
のかもしれません。ここのところは明確にされていませんが、先生の診断が
あってから1人分づつ作るより、まとめて作った方が効率が良いのは誰が考
えても明らかです。
効率を優先したいがために発生した事故で一番最初に思い浮かぶのは19
99年に発生したJCOの臨界事故ではないでしょうか? 大きな撹拌槽で
処理するよりバケツに入れて投入した方が早いし、簡単だということでマニ
ュアルに違反する事が日常化され、裏マニュアルまで作られて、臨界事故に
なりました。
マニュアルに違反したという共通点と、必要な教育ができていなかったと
いう共通点もあるでしょう。院内感染は過去に何度も大きな社会問題になっ
たことがありました。しかし、この谷本整形ではタオルは使い回しするし、
薬剤を事務机に置いていたり、患者のすぐそばで調剤したりしていました。
とても教育ができていたとは思えないような報道がされています。
それだけでなく、過去にも同様の作り置き点滴で体調を崩した人がいたと
いうことも医院長は認識していたようです。
マニュアルの問題、教育の問題、再発防止の徹底ができていないという、
「まさに起こるべきして起きた事故」と言えるでしょう。
毎日300人を超える患者から痛みを訴えられ、医師も看護師も一生懸命、
その痛みから解放してあげようとしていました。しかし、その努力も無にな
ってしまいました。
1年間で届出のある医療ミスは1300件にも及ぶそうです。それは届け
出のあったものだけです。実際にはその何倍も医療ミスがあるかもしれませ
ん。お医者様と私たち安全衛生に関わる者は同じ問題を抱えているのかもし
れません。
ご安全に!
2008.6.7(採血器具使い回し その2)
5月20日に発覚した島根県の採血器具使い回し問題が全国に広がり、埼
玉県の旭ケ丘病院では1万8千人に使い回しがあったことが報道されました。
採血針は毎回交換していましたが、使い回しを禁止されている本体が使われ
ていました。これから感染がないか確認が進んでいくでしょうが、感染がな
ければいいと思います。
私は数年前に健康に関するイベント会場で「自分の血液の状態を調べませ
んか〜」と呼び込まれた記憶があります。その時、採血器で“カチッ”っと、
穴を開けて、血を出して、シャーレに乗せて顕微鏡で見ました。なかなか健
康的な血液だと自分で納得をしていたのですが、思いだすと、あれは使い回
しが禁止されている採血器だったような気がします。たしか、私の前に並ん
でいた人が、「針は毎回交換するんだ、もったいないなぁ」って看護師に言
っていました。 あれから何年も経っていますし、大丈夫でしょう。
さて、この使い回し問題は島根県の診療所だけではなかったのです。全国
規模になりました。その原因はどこにあるのでしょうか。
2006年3月に厚生労働省は医療機関に感染の可能性がある採血器の使
い回しを禁止する通達が出されました。それを見て、使用禁止にした医療機
関と、感染の恐れがある本体を消毒して使えば良いと判断した医療機関と、
通達が届いていない医療機関があります。2番目の通達を読んで本体を消毒
するとした医療機関が一番問題ですね。厚生労働省が“禁止”と定めたにも
かかわらず、消毒の方法を選んでいます。このような事が発生すると再発防
止も何もできません。おそらく、針と本体カバーを交換するとお金もかかり、
医療廃棄物も増えるし、手間も増えるということで、消毒して使い回すとい
う方法をとったのでしょう。消毒は100%安全を確保できません。「99
%除去できます」と言われても、1%でも不安定要素が残る方法はとっては
ならないのです。
また、通達が届いていないことも大きな問題です。この機会にどうすれば、
末端の医療機関、すべての医師・医療職に通達が届くか考えて欲しいと思い
ます。でもルートを見直して完了と考えないで下さい。物ごとはプラン通り
進むとは限りません。何万何十万とある医療機関・医師・看護師等の確認は、
現実的ではありません。でもその中のほんの一部の方に通達の配信状況を確
認するのはそれほど困難なことではありません。通達の最終者である医師・
看護師が通達を見て、理解し、実行して、初めて通達の意味があるのです。
6月から道路交通法が改正され、後部座席のシートの着用状況を警察が確認・
指導しているのはご承知だと思います。法改正は国民が理解して実行した時
に意味を持つのです。
厚生労働省は通達の在り方を再考してください。
皆さまの企業ではそのような心配はないですよね。社内通達を出したら、
回答を求めるとか、職場を巡視して通達の効果を確認していますよね。そん
な事は当然だというような読者の顔が目に浮かびます。
ご安全に!